9月1日,いわゆる地震の日でしたが,関東地方では大規模なシミュレーション訓練が行なわれていました. 大きな地震が来れば皆さんのPCも大変なことになるでしょうし,大切なデータをお持ちの方は各地のサーバーにファイルを保存しておくなどの対策をされてみてはいかがでしょうか. 今回は前回に引き続き,CPUクーラーとは直接関係のない計測を行ないました.某代理店さまの依頼として,一般的なPC環境において「謎の液体」の性能評価をしていただきたいという要望を受けたのです. そこで,前回の「ANDY Cooler2つの固体誤差の測定」の側面から得られた結果を前提に,「すっぴんANDY」と「膜ANDY」の2つのCPUクーラーの比較を通して,「謎の液体」の意義を考えて行きたいと思います. (内容的にオカルトチックだなと思われる方も居ると思います.嫌いな方は読まないほうが宜しいでしょう.)
本計測は処理を施したクーラーと未処理のクーラーとの相関のみに着目します.
タイトルの時点でほとんどの方は理解されていると思いますが,「謎の液体」の正体はセラミック系の放射伝熱効率の良い液体ということになります. これをCPUクーラーの筐体に塗りつけることで,アルミや銅などの放射特性を改善するという目的があります. 過去にも「まず貼る一番」や「アルマイト加工」などでも同様の謳い文句がありましたが,仕組みとしては同一であると思います. ただ唯一異なる点は,好きなCPUクーラーに加工でき,しかも流体なので加工しやすいという点でしょう.
さて,原理的な話になりますと,放射伝熱は「放射体と吸収体の両方の温度に大きな差があること」「それぞれの放射率(=吸収率)が高い」の2点が重要です. 最初から言ってしまうと辛いのですが,PCの内部は使用中にどんどん温度が上昇しますし,また大抵のケースはアルミやスチールということになるので, 放射伝熱にとってPCのケースの中というのは決して良い環境ではないのではないか?と思います.
しかし,理論ばかり言っていても何の意味もありません.可能な限り公正なベンチを用意して,実験的検証を行うしかありません.”効果があるのかないのか”のみを追求してみましょう.
このような製品が代理店さまに話が来ているということは,既に実験レベルなどで効果が立証されていることが多いのではないかと思います. 実際に今回使用した製品(名称は申し訳ないのですが公開できません)も,他の一部の分野では効果が認められているようです.
前回の「偶然誤差の計測」と同様,固体誤差が計測誤差の範囲内にある「ANDY Cooler」2つを用います. 片方は未処理のまま,もう片方を「放射伝熱効率化液体」で処理させます. 処理の方法は,表面やIIFSの部分はブラシで塗りつけ,フィンピッチが狭い部分はスプレーを吹き付ける形となります. 見た目は写真では確認できない(反射してしまう)のですが,表面を触ると明らかに違いが分かります.
それぞれを別のCPUクーラーと仮定し,単純にいつもの手法でそれぞれの性能評価を行ないます. 測定概念は以下の図を参照してください. 方法は,クーラーの取り付け,負荷ソフト,モニターソフトの起動,(環境温度およびTjの指標=DTS)ログ開始,負荷開始,10分間待ち,ログ終了,負荷終了,クーラーの取り付け…となります.
以下,計測に用いたPC,環境,ソフトウェア等を紹介いたします.
| PC名 | ”ぷりぷり 2007” |
|---|---|
| CPU | Intel Core2 Duo E6600 |
| CPUクロック | 3.0GHz (333×9)に設定 |
| CPU電圧 | 1.450Vに設定 |
| EIST | オフ |
| CPUクーラーファン | COOLINK X12-1200 (12V/DR100%にて1200回転 12cm/25mm厚) |
| グリス | Thermalright社製のCPUクーラーに付属する普通のグリス - センターウンコ方式 |
| マザーボード | GIGABYTE GA-P35-DS3 Rev.1.0 |
| チップセットクーラー | デフォルト |
| グラフィックスカード | 玄人志向 RX1650PRO-E256HW |
| HDD | Western Digital WD360GD |
| ファンコントローラ | ZALMANさんの12V/5V分配キット |
| 測定人 | ぷりぷり (24) |
|---|---|
| 測定日時 | 2007年9月1日 (土曜日) 18:30~21:30 |
| 計測場所 | 東京都新宿区 ボロアパート内 11階 |
| 測定日天候 | 晴天 |
| 室温 | 27.0℃~32.0℃ |
| デジタルスチルカメラ | NIKON COOLPIX L1 三脚なし |
| Ta温度のロガー | ユニパルスさんのデータロガー with K型熱電対(坂口電熱; 約1mにカットして溶接) |
| CPU負荷ソフト | Tripcode Explorer v1.2.3 スレッド数2 標準割り当て |
|---|---|
| CPU温度計測&ロガー | ぷりぷりてんぷ 1.2.0.0 |
| CPU温度 グラフ化 | ぷりぷりてんぷグラフジェネレータ(PHP) |
| CPU状態表示ソフト | CPU-Z 1.40.5 |
| マザーボード名表示ソフト | CPU-Z 1.40.5 |
| 負荷率表示ソフト | Windows標準のタスクマネージャ |
| 画面キャプチャソフト | WinShot 1.53 デスクトップPNG出力 |
| 画像リサイザー | IrfanView 3.98 |
性能評価はCPUクーラー(ファン含む)の熱抵抗値の相関を取ることが基盤となっていますので,常に同一の負荷を与えて熱流Q(ja)を一定にし,TaとTj間で熱平衡に達した時点で評価することにします. Tjの測定手法はIntelの危険防止・ファン制御用の目安となるDTSを用います.また,Taに関してはファンの上部にK型熱電対を配置し,外部のデータロガーにて1秒おきにログします.(T型購入します) 発熱体はIntel Core2 Duo E6600 B2 (2.4GHz/1.325V)となります.とりあえずTjMaxを85℃として仮定し,その上でCPUコアの最大温度に換算後,環境温度Taを差し引いた値をDW(Difference Valueの独語)として評価指標とします. CPUの設定や計測環境等については以下の図を参考にしてください.まあ文章は無駄に長いですが,要は今までと一緒です.
The local ambient temperature TA is the temperature of the ambient air surrounding the processor.
For a passive heatsink, TA is defined as the heatsink approaches air temperature; for an actively cooled heatsink, it is the temperature of inlet air to the active cooling fan.
TA is best measured by averaging temperature measurements at multiple locations in the heatsink inlet airflow.
This method helps reduce error and eliminate minor spatial variations in temperature.
上記の通り,Intelの資料にTambientを測定するなら,ファンの上3~8mm離して,4箇所くらい測定しろと書いてあります.これは…次の計測からは意識した方が良さそうです. いわゆる"Open Bench"における測定がメインなので,以下の文章は省略します.
実際のCPUを使った場合,コアの温度を測定する方法は内部のTDを利用するしかありません.絶対温度についてはアレですが,それ以外に問題になるのは,絶対誤差が温度によって変化することと考えられます. (例えばDTSが10℃のときの誤差は5℃,DTSが20℃のときの誤差は4℃…ってことが考えられるため,あまりにTambientに差があると「DW葬式会場」になってしまう) とまあそんな感じで憂いは断ち切れませんが,とにかくTambientをできるだけ一定に保つことで,比例誤差を少なく保ちたいと思います.
正直これはどうしようもないと考えています.同じ負荷ソフトを使用したからと言って常に同じ熱量をCPUのヒートシンク側に与えてくれるかと言うと,それは分からないわ…ということです. 救いは前回,6計測した際の偶然誤差が少なかったことで,同じ負荷ソフトであれば偶然誤差は1℃以内に抑えられるであろうということです. ということで,今回は少なくとも1℃以上の差を与えた場合のみ優劣が与えられるであろうということになります.
そろそろ必要なのかもしれません.例えばフロスティさんでやられているようなものなど. とは言え,周辺冷却も意識したいので,マザーボードは使いたいな~. 「PCを立ち上げる必要がない」「同じ熱電対で測定できる」「次世代ソケットになったら,穴を開ければ良い」などを妄想しながら作りたいです. セラミックスヒータ辺りと銅板などを使って,実際のマザーに挿せる形にできたら最高です.